身も心もぼろぼろ誰かわたしを助けて
生息地
鬱蒼とした暗く鬱屈としたネットの片隅で、ときに互いに罵り合い、ときに互いを庇い合い、しかしその多くは互いになんの接点ももたず孤立していて、孤独ながらもなんとか今日も生息しています。
自暴自棄でやけくそになって書き込みをする種もあれば、承認欲求を満たす最後の場を求めて書き込みにやってくる種もありますが、いずれもその水飲み場の書き込み場に身を潜めて毒舌凶弾を装填して待ち構えているハンターによって討ち取られるという事件が多発しています。
しかしこの乱獲にも関わらず近年では生態数が増えており、社会の闇を移す象徴的な動物となっています。
特徴
二度の成長期を迎えて心が成長してくる頃に角が伸びてきます。そして成人する頃には立派な大きなハート型の角となります。
この珍重される角を目当てとした密猟が後を絶ちません。
うまく心が育たないといびつな形の角になり、また、非情にショッキングな出来事に見舞われてしまうと心が引き裂かれたかのようにハート型の角も音を立てて二つに割れてしまいます。
きれいなハート型の角に育てるのも、またそれを維持するのも大変難しいため非情に希少です。角の形があまりにきれいであるために仲間内でのけ者にされたり嫉妬されたりいじめられたりもすることもあって、100年に1度お目にかかれるかどうかともいわれています。
角がきれいなハート型に育たなかったからといってそれはダメなことではありません。
それに「曲則全、枉則直。窪則盈、弊則新。少則得、多則惑。是以聖人抱一、為天下式。(老子・第二十二章)」のごとくハンターに角を狙われないためにかえってきれいな角をもつものよりも長生きできるかもしれないのですから。
「長生きなんてしたくない」ですって?
それはし〜らない。
近縁種
いい感じにきれいなハート型の角をもつきれいな心をもった鹿に育ったと思っていたら、まわりに看過されたのか、あるときから足をジャーッジャーッ擦って歩き、右に左にふらふらとしてまっすぐ歩かず、いっつもちゃらちゃらしてシャキッとしない、ひとを小馬鹿にしたような態度をとるようになって、気がつくと角の形がへなへなな「へらヘラ鹿」へといつシカ姿を変えていることも多々あります。
「メンヘラ鹿」や「へらヘラ鹿」の他にはこんなヘラジカもいます。
- 繁殖力が強く一向に数を減らさない小生意気な口をきく「減らず鹿」
- 細かい盛りつけに菜箸あったらいいんだけど…「ヘラしかない」
- イランの一地域に生息する「テヘラジカ」
- 恥ずかしがり屋のぶりっこさん「テヘッ鹿」
- 玄関脇に住み着いていつもお見送り「靴へら鹿」
- 人間になりたい妖怪鹿「ベムベロヘラ鹿」
- ついつい飲み過ぎてしまう「べろヘラ鹿」
- 異性の誘惑に弱い「でれヘラ鹿」
- とっても長いからろれつがまわらず滑舌のわるい「舌ヘラ鹿」
- 結婚を司る神鹿「ヘーラー鹿」
- 心の傷も身体の傷も癒してくれる「ヒーラー鹿」
- 食べものを薄く薄く切って食べる「ピーラー鹿」
- 多弁で軽口が過ぎ人生の厚みが感じられない「ペラぃ鹿」
- 語学堪能でマルチリンガル「ペラヘラ鹿」「ベラヘラ鹿」
- 小さな外套を着た慈悲深い「カヘラ鹿」
- 教会で美しい鳴き声を響かせる「ア・カヘラ鹿」
- 広島の市民球団をこよなく愛する「赤ヘラ鹿」
- 今日も一日いっぱい勉強していっぱい遊んで帰ってきた「お腹をへら鹿」
などなど。