京都暑餅水紀行

 振り返ってみたらあれはちょうど3ヵ月前。これほどはやく戻ってこれるとは思っていませんでした。京都。

 まず向かったのは今宮神社。というより「あぶり餅」。

最古にして最高なお餅

 今宮神社の東門側の参道の両脇には『一文字屋和輔』と『本家 根元 かざりや』という二件のあぶり餅屋さんがあります。

 どちらもメニューはあぶり餅一択で、一人前一皿11本(「11」は陰陽道で厄除けや無病息災に関する数字であるためだそうです。でも数えたのですが私のは10本だったのですけれども…)600円で、急須に入れた常温の京番茶?も頂けます。

 注文を受けてから餅を炙るようで、提供されるまでに少々時間がかかりますが、風情ある建物やお庭を愛でていればほんの少々のことです。

 あんこ好きであり、「あぶり」のイメージから炭っぽいちょっとむせるような味(お寿司やチーズなど、ただ炙ったものってバーナーのガスっぽい味や焦げて炭っぽいイガイガが残って大半が成功していない、と、個人的には思っています)なのではないかと、あまり期待していなかったのですが、これがまたおいしいのなんの。お餅もさることながらタレもいい。白味噌かな?とは思ってはいたのですが、聞いてみると、白味噌ときな粉だとのことでした。

 

 ぴったり参道の両脇に同じものを売っているお店が対面して両立しているとなると「どちらの方が美味しいか」と吟味してみたくなるのが人情というものでしょう。Youtubeなどで流れてきた動画でも「どちらも食べてみては?」ということでしたので、参拝前に1件、参拝後に1件訪ねて食べ比べてみました。

 その結果…どちらの方が美味しいということはなく、どちらも美味しかったです。もはやこれは好みの問題となります。

 ちなみに私は『一和』さんの方が好みです。『かざりや』さんよりお餅がやや小さくやや柔らかくはないのですが、食感と甘さ控えめなタレの感じが好みです。

 また『一和』さんには二階室があり店舗真ん中に屋根を貫く松が植わっていて、建物についてもわずかに『一和』さんの方が好みです。

 履物を脱いだりお座敷にあがるというのはある年齢以上になるとちょっと大変で億劫となるので『かざりや』さんの向かって左奥の方の席にはあがっていないのですが、ちょっと眺めた感じ、お庭が趣があってとても良さそうな感じがしました。次は億劫でもそちらの席へ座ってみたいと思いました。特に何も言わなければ基本的にはそちらの左奥の方へと案内されるようです。向かって右側の縁台が並んでいる風景もそれはそれでまた違った趣があってよかったですけれどもね。事前にお声がけ頂きましたが風で煙や灰が舞って来ますが、まあそれもまた一興というものです。

 

 帰ってきてからYoutubeを見たりなんかしていると『国宝』のロケ地だったり、「「本家」や「根元」とか書いてあるのでかざりやさんの方が古いんじゃない?」とか話していたのですが、「血續二十五代」と書いてある『一和』さんの方が圧倒的に古かったです。なんたって江戸時代と平安時代の違いがあるのですから。そもそも『一和』さんは日本最古の飲食店で1000年以上続いています。ということを帰って来てから知りました。事前に知っていればもっと見てみたいところもありましたし、大変でも2階も見てみたかったです。

 二件とも並ぶことなく入れたのですが、こうしていろいろ知ってみるとそんな日はあまりないのではないかと思いました。暑かったせいですかね?なんたって今宮さん到着時の気温が38℃だったのですから。どちらもエアコンはなく扇風機はたくさん稼働していましたので夏場に行かれる方は少々覚悟がいるかもしれません。個人的には境内は日差しも強くて暑かったですが、あぶり餅の二件の店内ではそこまでの暑さを感じませんでした。

 今宮さんにしても創建1000年以上で「玉の輿」の語源となった地であったことなども帰ってきてから調べて知ったのでした。

 そもそも今回なぜ今宮さんに行こうと思ったのか、いまだにわかりません。『国宝』の情報は何も持ってなかったですし、あんこでない餅にはあまり惹かれることもなかったわけですし、20年ほど前に姪の縁結び祈願に来たことはありますが、そのときは楼門から入って東門の方へは出なかったのであぶり餅のことは知らず、それなのになぜ今宮さんなのか…きっと呼ばれたのでしょう。そういうことにしておきましょう。

お餅さん

 今回の私の一番の目的は長五郎餅。暑さのせいなのか阿闍梨餅同様特段思うところはなかったです。一度だけではわからないので、次回、また試したいと思います。『長五郎餅本舗 本店』は北野天満宮はすぐそこ(『北野天満宮境内茶店』はその名の通り境内にありますが、毎月25日の縁日のみ)で、参拝もしたかったところですが「今回は前を通るだけで失礼します」とつぶやきながら通り過ぎました。なにせ39℃もあって広い敷地を歩くのかと思うだけでクラクラしてしまいましたものですから。

 マチ先生一押しの長五郎餅は今回期待を超えるものではありませんでしたけれども、しかし私にはまだ矢来餅があります。マチ先生(夏川草介さん)のあげていた3つの餅のうちの1つ、矢来餅が。

 

 ということで『ゑびす屋加兵衛 本店』さんで矢来餅を買おうと、なかなかわかりづらく細い道を行ったのですが…お休みでした。これもまた帰ってきてから調べたところ火曜定休やらしいのですが、あの日は火曜ではなく、さらに調べてみると不定休というのも散見されましたので、どうもたまたま希少な不定休に当たってしまったようです。どうやらこちらには呼ばれてはいなかったみたいですね。

 

 今回の餅旅ナンバーワンはあぶり餅一強でした。当日もう一回行こうか、翌日もう一回行こうか、と、ずっと機会を伺っていました。しかしこのときには40℃。この暑さに気力も体力も何もかも、延々と流れる汗とともに沸々と湧き出る再訪への意志も再三にわたって拭われ挫かれてしまったのでした。

神域の為せる業か酷暑のせいか

 『ゑびす屋』さんは下鴨神社の近くにあり、『糺の森』を見てみたかったのでちょっと寄ってみることにしました。”ちょっと”というのも、もちろん暑いから。

 暑すぎるせいか、あれほど緑豊かな場所で、小川のそばや祭祀遺構の方など汗だくで方々歩きましたが虫に刺されることがなかったのがちょっと不思議でした。意図せず自然に神域での殺生を避けられました。

 

 下鴨神社についても帰って来てから調べて知ったことがたくさんあるのですが、そのうちの1つ、『鴨長明の方丈』を復元したものがあったらしいのです。表参道を歩いていき『瀬見の小川』の向こう側にもお社があるなあ、見てみたいなあ、と、思っていたのですが、小川を渡る道がなく、あった!と、思ったら遠い…ということで寄らずじまいとなりました。

 

 『南口鳥居』の手前、左手に『休憩処さるや』さんがあり、幟の「申餅」の文字が目に入り、餅旅なのでこれは行かねば、と、思ったのですが、ひとりペースが違って、あまり乱すのも気が引けてしまい、後ろ髪引かれつつ『さるや』さん横目に通過してしまいました。思い返すと『方丈』ともども行っておけばよかったと悔いるところですが、あの暑さの中では”戻る”という選択はありませんでした。

 ポケットを叩くとビスケットは増え、本を読むと読みたい本が増えるように、京都は1度訪れると再び訪れたくなり、さらに行きたいところが増えていきます。

 

 今回の旅行も無計画の思いつきだったので特に目指して来たということではないのですが、結果的に『スピノザの診察室』『エピクロスの処方箋』の聖地巡礼っぽくなりました。

 

 御朱印を頂いて右奥の方へと向かっていったところ、『御手洗池』の水がありませんでした。弟もはじめて見る光景だったらしく「水がない」と言ってしました。他のいくつかの場所もそうだったのですが、土用の丑の日(2026年は23日)の祭祀・神事・儀式のための整備のためなのか、川や池の水を止めて作業していて、水がなかったり少なかったりするところに度々出くわしました。

 どうも今回は「無病息災」に関わるものには避けて避けられてしまいがちだったような気がします。

アクセス良好四条河原町ベース

 今回弟がとってくれた宿は『ホテルミュッセ京都四条河原町名鉄』。前日であれば一人当たり優に1万円を超えていたのですが、タイミングがよかったのか優に半額以下でとれたようでした。

 『ホテルフォルツァ』も好立地でしたが『ミュッセ』はさらに立地が便利な感じがしました。隣の隣には『ドン・キホーテ』があり、ホテルとドンキの間の通りを入っていけばすぐ寺町京極商店街ですし、『イノダコーヒ』と『小川珈琲』のはしごを考えていて、その二件へ行くにもそれほど遠くなく、『京都画報 第54回「常盤貴子お薦めの喫茶 有名店から個性派まで」』で紹介された『フランソア喫茶室』(22時までやっているので夜に行こうと思っていたのですが、疲れてしまい眠ってしまって行けませんでした)にも近そうでした。

 ただ『フォルツァ』よりも救急車のサイレンやヤンチャなバイクの走行音はやや大きくやや頻度高く聞こえました。また、コーヒーメイカーのコーヒー、というより水(?)がちょっと残念でした。

 

 水繋がりで言うと、部屋のシャワー水栓、なぜにそんなに低いところにあるのか、またシャワーの高低の位置を変えるとき鏡の厚みに引っかかるので避けなければならなかったり、浴槽が想像の一足分くらい深くて怖かったりと、なかなかに使いにくいつくりになっていました。

 それもこれも、浴室を広く見せたいがためなのでしょうけれども、大きな鏡、この鏡の位置やサイズ感が元凶なのでしょう。ホテル業で最も煩わしいのが浴室の掃除だというようなことを『宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど』の「ホテル従業員の愚痴」で言っていたと思うのですが、この鏡は掃除を一段と煩わしいものとしているものと思われ、従業員にも宿泊客にも誰にとっても「なんだかなあ」の鏡でした。

 

 ただシャワーヘッドが『ReFa(リファ)』でウルトラファインバブルを試せたのはよかったです。ミストが他社のものよりも細かく当たりが柔らかく、それでいてちゃんと流せる感じがしました。それでいてミストなのでちゃんと節水できてる感も得られて家庭で使うにもいい感じでした。

 しかし…重い。握りが三角形状な感じで取り回しというのでしょうか、なにかそういったものは大変。取り落としてしまいそうで疲れます。ミストの次の直噴状なのもちゃんと柔らかさと勢いがあって、しっかり水流を感じて洗ってる感を得たいというひとにも十分だと思うのですが、なにせ重い。固定して使えばいいのでしょうけれども、自宅に導入するとなるとお掃除のときのことを考えてしまいますね。

方向混線

 今回、京都の道に明るい弟とは別行動でホテルからどこかへ行くとき、たびたび方角を見失ってしまいました。だいぶ後になってわかったのですが、道に暗いわたしたちは『フォルツァ』と『ミュッセ』が同じ通りにあるという感覚に陥ってしまっていて、それで北へ向かっているつもりで東へ行っていたり、東へ向かっているようで南へ進んでしまっていたようです。そのことに気づいたのは『八坂神社』が見えたときでした。『フォルツァ』から真っ直ぐ行ったところに『八坂神社』はあるのですが、『ミュッセ』から真っ直ぐ行っても一向に『八坂神社』が見えなかったのです。そう、見えるわけがないのです。このことに気づいたとき、方向を見失ったナビのコンパスがぐるっと回って正しい方向を指すときのような、コンパスの針が「ぐい~ん、ぴたっ!」と動いてはまった感じがしました。

 

 プチ迷子中『立誠ガーデンヒューリック京都』をぐるっとまわって河原町通へと出ようと歩いている途中、右手に神社が見えて「お稲荷さんだ」。京都のお稲荷さんってなんだか御利益ありそうな感じがするので参っていこうと入っていくと、なぜか坂本龍馬の肖像。右下には29歳(28だったかな?)と書いてありました。

 帰ってきてから調べたところ、そこは坂本龍馬や中岡慎太郎ら土佐藩士が熱心に参拝した『岬神社』、通称「土佐稲荷」でした。京都はちょっと入ってみたところがちょっとしたところではなく、どこもかしこもなかなかの謂われのあるところばかり。

 お稲荷さんにせよ地蔵尊にせよお釈迦さんにせよ、「京都の」という接頭辞が付くだけでなぜか「ホンモノ」や「別格」感があり、ご利益もひとしおと思わされるところがありますよね。

それは酷っ!

 朝食を『イノダコーヒ』でいただこうと朝からすでに気温が30℃を優に超え、汗を拭い拭いつつ向かっていると、途中、町内の掲示板に『京都マラソン』のポスターを見かけました。立ち止まってじっくり見たわけではなかったので「京都マラソン」と「7月16日」の文字ぐらいしか見ていなかったので「7月16日に京都マラソンを開催」するのかと思って「ほんの数日後、こんな暑さの中でマラソンだなんて、それは酷っ!なんて過酷なことをするのでしょう」と早合点してしまいました。

 帰ってきてから「そういえば京都マラソンどうなったのでしょう?熱中症で運ばれた人が続出だったのではないか」と調べてみて7月16日はマラソン参加者募集開始日のことであってマラソン開催日ではないことを知りました。ですよねー。

京都の水の味

 飲食店で頂くお水は前回も美味しくない、と、思ったのですが、その他、たとえばホテルのコーヒーメイカーで使われている水などは美味しくないと感じることはあまりありませんでした。しかし今回はどこもかしこも水が美味しくない。時期的なもので暑くなってくると美味しくなくなるのか、そもそも美味しくなかったのか、「水が合わない」を痛感した観光でした。

 

 唯一、銀閣寺近くの飲食店で頂いたお水が、言っても他に比べればという程度ですが、まだ”マシ”でした。ただこのお水も曲者で、クセがない、クセがなさすぎて味も何もない、水だから無味ではありますが、それにしても”無”、怖いくらい無なお水でした。

 ただキンキンに冷やしてくれていたところが本当に助かりました。普段冷たいお水はあまり口にしない常温派なのですが、こうも暑いと冷たいお水がありがたかったです。

 出されたものは出来るだけ残したくないので普段、出されたお水もできるだけ飲み切るようにしているのですが、今回はだいたい残しました。飲めませんでした。

 水のせいなのか、水をよく使ったり、水が味の決め手となるような食べ物ほど美味しくありませんでした。京番茶も水の味がすべて台無しにしてしまっていて、こうなるとちょっと茶の湯で供されるようなお茶もどうなのだろう?との疑念が湧いてきます。湧き水・井戸水は美味しいのでしょうね。

 と思い、途中から空のペットボトルを持ち歩いていたのですが、そういうときに限ってなかなか出会わないものです。前回伺った『錦天満宮』には「錦の水」という公共の井戸水があり(前回このお水に触れてはいたのですが)、このお水を使っている飲食店もあって美味しそうだったのですが、そして今回もその前を通りはしたのですが、そのときはすっかり忘れてしまっていて素通りしてしまったのでした。

狸に引かれて本能寺参り

 前回、おそらく『伏見稲荷大社』の参道にある『花家』さんで「いなり寿し」を食べ、次に行こうと歩き出したところ、近くのお店で見かけたのだったと思うのですが、大小様々、ポーズも様々な信楽焼のたぬきの中に弟いわく「かわいい」たぬきがいたようでした。弟はそれを買おうかどうか迷いはしたのですが他の店にもあるだろうと、そこでは買いませんでした。そうしてそこからは「たぬき」を気にしながら「ちょっと違う」「おしい」「近い」などと選別しながら回っていたのですが結局あのタヌキを超えるタヌキには会えなかったようで、帰ってきてからも「すぐに飽きるだろうけど買っておけばよかった」と心残りとなったようでした。

 

 それを聞いていたのでたまたまYoutubeで見かけたよさそうなタヌキ、それは京都寺町通りのお店に生息しているもので、それを覚えていたところ、今回『伏見稲荷大社』へは行きませんでしたがホテルが寺町通りの近くだったので、そこへと案内してあげようとそのお店を探してみることにしたのでした。

 しかし、タヌキの映像は覚えていてもお店の名前も正確な場所も覚えていなかったのでなかなか見つからず、見つからないままに京都市役所の通り向かいの辺りまで来てしまいました。そして結局のところ見つかりませんでした。

ふとっ奇縁

 ただそのとき発見がありました。市役所に向かって右手「さすが寺町、ここにもお寺があるわ」と思ってはじめに目についた立像「二文字目は”正”でいいのかな?立正安国?」そこから寺名は何かな?と目を左へと転じていくと「本能寺」、そう、ここは本能寺。

 『豊臣兄弟! 第27回 本能寺の変』が放送されるちょうどその日にその前に狙わず立っていました。写真を撮ったりなにかその話をしたり立ち止まったりする人は誰もおらず「ほんとうにあの本能寺?それとも違う本能寺?」みたいな感じになりました。

 『豊臣兄弟!』本編終了後の「紀行」でちゃんとさっき見た、なんなら門前に掲示されていた刀を構えているような撫で切った後のような姿の女性の映っているドキュメンタリー映画『日本刀の美』のポスターもまったく同じでそのままなあの本能寺でしたので、「あの本能寺はほんとうの本能寺だ」と、確認できました。あまりに同じでそのままだったので最近撮ったのでしょうかね。さきほどたまたまあそこに立っていたのかと思うとちょっとばかり可笑しかったです。

 

 初日の夕暮れ時、三条大橋を渡っているとき、とても美しい空模様、マジックアワーがやってきたのですが、この瞬間を残そうとしているのは外国の方が数人いただけでした。あまり写真を撮る方ではない私でさえ撮ってしまったというのに、そこに住む人には”日常”なのか、感動が生活に飲まれてしまっているかのようでした。まあ、その方が人が殺到しなくていいのですけれども。

 次こそはいつになるか知れませんが、とにかく今度は暑くないときにまた、そしてまた何度でも行きたい京都かな、という感想です。