新進気鋭の現代アーティストに迷いはない
こどもの描く絵はとても力強い。
形を成していなくても、配色になんの思想がなくったっても、描線に一切の迷いがなく、彩色に一切の躊躇いが見られません。
まだ表現の場と現実とが地続きで境がないものだから、描く線はたびたびキャンバスの外にまで大きくはみ出して、それはそれは豊かな世界を展開します。
どの子の絵を見ても、「この子は天才なのではないか?」と思わされます。
また実際こどもは天才なのです。
たとえ自分のこどもではなくても、親バカや贔屓目を差し引いたとしても、すべてのこどもの絵が天才の描くそれなのです。
そんな巨匠たちは成長過程で言葉を覚え、体を思うように動かせるようになり、たくさんの絵本を読み、物語を知り、またみずからお話を紡ぎ出すようになります。そして成長にともなって描く絵の形が徐々に整ってゆきます。
しかしその反面、既存のなにかに近づけようという意識も徐々に育ってきてしまうため描線に迷いが生じ、線が細く弱々しくなってゆき、色彩は精彩を欠いて、あのきらきら光る才能が影を潜め、ついに巨匠たちは凡人へと堕天してしまいます。
モチーフやコンテキストが明らかになってくると力強さに陰りが出てきて明暗の逆転がおこるようです。
こどもたちが巨匠でいられる期間はあまりにも短い。
3歳ともなるともうだいぶ枠内にこじんまりと小さく収まり始めてきます。
こどもの絵にはなにが描かれているのかさっぱりわかりません。でも力強い。
こどもの絵には描いている本人でさえ説明がつきません。これは言葉もものも知らないということもあるけれどね。でも迷いがない。
こどもはまさに"現代"アーティスト。
存在するだけでアートな巨匠。
★
少子化社会にはアートが足りない。
巨匠がすくない。
弱くて迷いが蔓延している彩りの乏しい社会。
だから少子化対策はアート活動でもある。
「★」印のところでの錐揉みっぷり、あそこでの超絶旋回っぷりえげつないでしょ?
こんなアクロバティックな着地はいかがかしら?