わたしの母はキレ者でした。
母は生涯、賢い父の父性に、表立ってはいませんでしたが、それでもどこかいつもその影にとり憑かれていました。
父を超えるような、せめて匹敵するぐらいの父性を求めてさまよいましたが、ついに巡り合うことはできず、母の才は男社会のなかで黙殺されました。
なのでわたしはおじいさんの功罪として、まともであったことを密やかにあげています。
しかしこの罪をおじいさんにだけ背負わせるのも酷なことですし、(わたしが勝手に罪をなすりつけているだけのことではありますが)不憫ですので、おじいさんのような父性を母にもたらさなかった社会にも有罪判決を、こちらも物陰に潜んでくだしています。
あるお札のひとは「門閥(封建)制度は親の敵」とおっしゃいましたが、わたしには「男社会は親の敵」。かといって先生のように制度に一矢報いるようなことなどできるわけでもなく…。
どなりちらすばかりの無能な男を立てるために、才を隠して無知なフリをしなければならなかった(精神的に弱かったので強攻にでることもできず…性別ではなく能力で判断する男がひとりでもいてくれたら世に出られたでしょうに…)母の心情をおもうとやるせなくて憎らしい。単なる親バカならぬ子バカなはなしなのでしょうが。
とかく大家族の真ん中っ子は孤独で異端視されやすい。一見冷めているようにみられますが、実は家族愛がつよい。上下にはさまれて肩身の狭いかなしいポジション。それが真ん中っ子。
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