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あめみか

「雨はいつもわたしのみかた。」 … 思想・哲学・世迷言からイラストまで、多岐にわたってたいへんくつに綴っています。

マニュアルの真価は従属信奉することではなく意思の疎通をはかるもの

物語 物語-昔日

マニュアル人間

 ↑これを書いていて、メディアで紹介されていたことを無批判に取り入れて満足しているような企業・経営者さんの姿が浮かび上がってきて、よくあるパターンですが「ちょうど今ちかくにいるから一度あって話を聞いてみなよ~」という流れで紹介されて話を聞かされた、自称健康食品、実際のところネズミ講の男性営業マンのことを思い出しました。

 

あやしい心理学に則っています

 このとき以来まったくおつきあいはありませんが、そう言って紹介してきやがった方が連れてこられた男性は、その手の方が踏襲することを1から10まですべてそなえたような方でした。

 

 つまり、スーツ姿で靴はピカピカ、胸には金のボールペン、腕にはゴールドの腕時計という出で立ちで、さも儲かっている感を演出して装っていました。

 

 喫茶店で席に着くと、すぐには本題に入らず、まずは打ち解けてこちらのガードを下げようと、共通点探しをしてきました。

 

 「どんなことにご興味がありますか?」「ご趣味は?」「どんな本をお読みになりますか?」など。

 

 めんどくせっ!と思いながらも「ロシア文学にすこし興味があります」と答えました。

 

 すると「あぁぼくもです。何を読まれましたか?」ときたので、ツルゲーネフさんの『父と子』でいこうかとも思いましたが、それではきっと話しづらいでしょうから、ここは無難に読んだことのありそうなドストエフスキーさんの『罪と罰』にしておきました。

 

 「あぁあれおもしろいですよねぇ~」と。

 

 ほぉ~。

 それじゃあ聞いてみちゃおっかな~。

 主人公がどんな思想信条で金貸し老婆を殺害したと思うか。

 それと物語全体を通して何色が見えるか。

 

 これは前からちょっとひとに聞いてみたかったことなので。

 

 しかし、この問いに対する答えでもう完全に退潮。

 

 「あっこいつ読んでねぇ~や」

 

 「ラスコーリニコフ」や「論文」という単語は一切出てこず、「おもしろいですよねぇ」しか言わない。

 

 あぁーもう用ない。はやく帰りたい。

 

説得力に欠いた上辺

 それで、すみません。ここで前言をすこし修整します。

 

 1から10までコテコテのそっち系と言いましたが、実際はこてこてが過ぎてお腹のお肉が15くらいはみ出ていました。

 

 健康食品を売ろうという者がそれでいいの?

 その商品わたしよりもあなたに必要なんじゃない?

 えっ?

 愛飲者なの?

 じゃあ効果ないこと実証しちゃってるじゃない。

 広告塔としてあなたマイナス。

 

 この話が持ち上がったときからそっち系の話をされることわかっていたけれどさぁ、せめてもそっとイケメンつれてこない?

 

 見た目で説得しようと涙ぐましい努力をしているのはわかるけど、なにその見るからに安っぽい金のボールペン。素人でもメッキよりもひどい、ただ金色をしているだけのものだってバレバレじゃない。

 その腕時計もそう。

 ちゃんと時間合ってる?

 時計してるのになんで店内の掛け時計みるの?

 

 えっ?

 割り勘?

 儲かってるんじゃないの?

 それにあなたの方が高いもの注文してるし。

 

 いい車に乗ってるって聞いたけど、バスで帰るの?

 なんで?

 車どうした?

 車見せれば説得力増すと思うんだけどな~。

 

 雑誌かなにかでわたしも読んだことがあったわ。高価な物を身につけているとステータスを高く見せかけることができるから、詐欺師なんかは儲け話に説得力や信憑性を水増しするのに使う手だって。

 でもそこに書いてなかったかな?「さりげなく」って。

 

 たしかに見せつけてきたわけではないけれど、コテコテすぎて目につくわ。

 ふだん身につけてないでしょ、それ。不自然にキレイすぎるしそれを使っているときの動作がなんかぎこちない。

 

不思議な算術

 この際ミタメには目をつぶろう。

 

 それでもなにその説明。

 

 会員になってその商品をだれかに売った場合、その商品の10%が紹介料としてキャッシュバックされるとのことでした。

 

 さらに、もしわたしがだれかを勧誘して会員なってもらった場合、その会員さんが他のだれかに商品を売ると、その会員さんにはやはり商品の10%がキャッシュバックされるのですが、その会員さんはわたしと紐付けられているため、わたしが売ったんじゃなくわたしが勧誘した会員さんが売ったのだとしても、その商品の5%がわたしにキャッシュバックされるという仕組みなのだそうです。

 

 また商品の売上成績によってランクアップしていき、抱える子会員、孫会員、ひ孫会員が増えていくほどに上がってくる収益もキャッシュバックされる利率も増えるから、なにもしなくても儲かるようになるというのです。

 

 これはこの手の話でよく見られるピラミッド型の仕組みですよね。

 まあここまで、よくはないですけれどいいとしましょう。言わんとすることはわかりました。

 でもこの次の説明がねぇ…。

 

筋の通らない数字

 「たとえば紹介して頂いた会員さんが商品を売ると、その会員さんにはその商品の10%が翌月振り込まれまして、仮にその月に田岸さんが1つも商品を売ることができなかったとしても、会員さんが商品を売ったことで生じる10%と紹介して頂いた会員さんが商品を売ったということで生じる5%の合わせて15%が振り込まれるんですね。」

 

 

 え~まったく意味がわからない。

 こいつの戯れ言を聞いているわずか数分間のあいだにわたしの理解力が超絶鈍化してしまったのではないかと困惑しそうなほどなに言ってるのかわかりませんでした。

 

 なんで割合と割合を足してんの?と口には出さずに疑問に思ったので聞いてみたところ…。

 

 「いやだからですね、会員さんが商品を売ると、ランクにもよりますが、一番はじめのブロンズクラスですと、その商品の15%がなにもしなくても振り込まれるんですよ。売上げノルマもありませんから、絶対損しないんです。どうでしょう?協力して頂けませんか?」

 

 

 いやいやいや。だからぁ~。あなたが言いたいことが「会員が売った場合、商品代金の10%の5%が翌月振り込まれる」ということだとしたら、10%+5%ではなくって10%×5%なんじゃあないの?

 これだと結局わたしのところに入るのは商品代金の15%ではなくて0.5%なんだけど…どういうこと?こういうことじゃあない?

 え~~~わからな~い。この話どう解釈してどんな計算したら15%出てくるの?????

 

 

 頭の回転が遅いものですからそのときこんな風に言うことができず、単に「なぜ10%と5%を足すんですか?割合って足していいんでしたっけぇ?」としか聞くことができず、それで先ほどのような説明が2、3度リピートされ1時間ほど無駄に費やしてしまいました。

 

 もうとにかくはやく開放されたかったので、一応こんなこともあろうかと「明日朝はやいしもう眠いから…もし会っても途中で眠っちゃうかもよ」という"寝るかもしれないよ"のフリをお会いする前にあらかじめ入れておいたので、ここだっ!と思って寝たふりを小1時間断行してみたのですが、こっちが聞いていようがいまいがお構いなしに説明は止むことなく進行されました。

 

 聞いてなかったら意味ないじゃん。話途中でも切り上げて帰ればいいのに、既定を済ますまでは突き進むマニュアル人間か。あぁ~それでそのあやしい外見に仕上がったってわけね。納得。

 

 でもある意味この実直さというのか素直さと言えばいいのか、なんかこわい。逆上して帰り道刺されないよ…ねぇ?

 

導くマニュアル

 マニュアルを否定しているわけではありませんよ。

 むしろマニュアルを作成できるのであれば、体系化できるのならつくった方がいいと思いますから。

 

 昔、ほんの一時、工場につとめていたというかお手伝いに出たことがあるのですが、その工場では、そういう時代だったということもありますが、マニュアルや手引き書といったものはなく、それぞれが個々のやり方で独自に仕事を進めていました。

 だから同じ仕事でも組むひとによって手順も考え方も異なるので、まずはそこを探って察しなければなりませんでした。

 

職人気質というエゴ

 ただみなさん一様に口にする言葉が「職人だから」。

 

 

 たしかに職人技は一朝一夕では身につくものではありません。

 しかしこの工場に限っていえば「職人だから」は、職人だから話し合う必要がない、職人だから個々の思うように仕事を進めればよい、職人だからうまく説明できなくても仕方がない、職人だから…、というように自己弁護の色を濃厚に醸し出して使われていました。

 すくなくともわたしにはそのように感じられたのです。

 

 さすがに「見て覚えろ!」とは言われなかったのは幸いでした。

 それもそのはずで、だって見て覚えるもなにもまず見せていないのですもの。

 その点は職人さんにも自覚があったようです。

 

 「わからないことは聞けよ」とはおっしゃって頂きましたが、その仕事の全体がわからず作業工程も人の頭の中にあるのでは、自分がなにを理解していないのか、わからないことがわかりません。

 

 口頭でも行動でも古文書でもどんなでもいいですから、わからない者としてはなにかで示してほしいものです。でないとわからない。

 逆に言えば、ちゃんと示してもらえればそこそこやりますから。

 

 ある日の作業は0.05mm以下だったか0.01mm以下だったか忘れてしまいましたが、精度の求められるものでした。

 あまりに人手が足りず納期も迫っていたようで、そんなそこそこの技術を要求されるようなところであるにも関わらず、なぜかわたしはかり出されたのでした。

 

 一通りの説明やコツなどは教わりましたが、このような状況のため、要は「あとは実践でどうにかしろ、それが仕事だ。それがプロってものだ」と言い放たれ、自分の仕事に戻っていく職人。

 プロ?今プロって言った?言ったよねぇ?プロってなんだ?とモヤモヤイライラしながら口答えすると余計やっかい事が増えそうなので仕方なしに作業をすすめました。

 

 すると、そこそこの器用さが災いして3日ほどでコツをつかんでしまい、1週間もすると自称職人の力量をほんのすこし、1割ほど超えていました。

 精度が求められるので品質は変わりませんが、作業スピードがね、すこしだけ上回っちゃった。

 

 このときもうお一方、入社三年目の男性職員の方が応援で他のラインから来られていましたが、一向に習得できずにいました。

 人には向き不向きがありますが、時間があってわたしが上司だったなら、この男性職員も3日もあればできるようになっていたと思います。

 なにせ時間がおしていたものですから、それに職人さんがわたしの仕事の精度を疑って監視するような目でこっちチラ見してくるし、それでその男性職員さんとお話しすることができませんでした。

 

マニュアルの意思

 と、まあこんなことがありました。

 それでそのときなにを思ったかと言いますと、この工場に決定的に欠けているものは、経営手腕でも工員の数でもなくマニュアルなのではないかと思ったのです。

 

 マニュアルの根底にあるのは一体感や協調性といったものなのではないかと、そのときはじめて思いあたったのでした。

 

 作業効率がよいと思われる方法を考えてみなでそれを実行する。そのことで意思の統一もはかれる。それがこの工場では「職人だから」が横行して阻んでいる。

 

 それは工場内に各職員のテリトリーがあり、そこに足を踏み入れると違う企業に出向いているような、なにかそのような感覚として現れていました。他の人はわからないけれど、わたしにはね。

 

疎まれるマニュアルづくり

 マニュアルをつくるのはめんどうです。

 とくに当初は手間がかかるばかりで、「こんなことをする暇があったら仕事した方がいいわ」「だれでもわかっていることをわざわざ話し合うなんて時間の無駄だ」と感じられるものです。

 

 しかし長い目で見れば、マニュアルがあれば作業工程の見直しが簡単にできるので品質の管理・維持が容易になり、だれがなにをわかっていて、ほんとはだれがなにをわかっていないのかをあぶり出すこともできますし、新人が戦力になるまでの期間を短縮することにも貢献しますから、中長期的に考えれば文字に起こして後に残すことが可能であるもの、マニュアルとして起こせるのであればそうした方がいいのではないでしょうか。

 

批判対象はマニュアルの字義通りではなく時宜通り

 それでもマニュアル人間は批判されます。

 マニュアルはあった方がいいと思っていますが、だからといってそれをあらゆる状況で寸分違わず遂行しようとするのは間違いだと思ってもいます。そうでしょう?

 

 時宜を無視して字義通り敢行しようとするからおかしなことになるのであって、状況によって柔軟に解釈してマニュアルを利用すればいいのです。

 

 マニュアルはある種、理想的な状況下において最も作業効率を上げるものであって、状況が変われば適宜修整する必要があるものです。

 

 またマニュアルを絶対信奉して今度一切手を加えないというのでは改善の機会を逃してしまい、実情から乖離していきます。

 よりよい方法や手順があるのなら積極的に修整して、よりよいマニュアルへと改定し続けようという姿勢が肝要です。

 

 

 応援するわけではありませんが、ネズミ講の営業のお兄さんも、マニュアルに頼るなとは言いませんが、せめてマニュアルの使いどころは自分の頭で考えて利用したらいかがでしょうか。

 

 話の途中で相手が眠っているというのに話をつづけたということは、もしかしてわたしはただの練習台として使われたってことなのかな?

 それもマニュアル通りだったのかな?