
現代アート、特にペインティングは基本的に黒の世界、塗り込める、塗り重ねる黒の時代にあると思う。その欲を、内なる様々な色をもった色彩豊かなその情動を塗り重ねてゆくために必然的に暗い色調、黒基調となってゆく。
(黒より鼠色や錆色の方が多い気がするけれど…)
欲動、欲望の表れのように見えるので本能的で野性的な滋味がある。美しさを追求した古典的な芸術は抑揚が効いていてとても知性的かつ理性的な精緻さを極めている。前者は足し算的で後者は引き算的な手法である。
パッティングやバラマキ、流し込みや垂れ流し、振りまきに引き裂き、作為を極力廃して偶然に任せることも多く、というか場合や作品によってはそれが主体、メインテーマ、それこそが意図であることがあり、そのためにゴテゴテ、ドロドロしたものとなりやすい。したがって作品の一部にはあっても全体としては爽快感やキレイさの感じられるものはごくごく稀。
欲や生死の塊を見せられているようで爽快感やキレイさは感じられなくとも威圧感や存在感は多分に感じられるものとなっている。
その点が不快感を受けても目を引き目を離せなくなることがあるのだとおもう。
およそ癒やされるという類のものではないのでリビングに飾りたいとはおもえない。疲れちゃうとおもう。
これが色ではなく光であったなら、白、というより白飛び、白い闇、ホワイトアウト、白昼夢となるだろう。
黒に疲れたひとたちによって、いつかは、またあるいは次代は(光の)白の時代がやってくるのかもしれないね。