あめみか

「雨はいつもわたしのみかた。」 … 思想・哲学・世迷言からイラストまで、多岐にわたってたいへんくつに綴っています。

議会制度は一院制がいいのか?二院制がいいのか?それとも…

 民主政治は衆愚政治となりやすく、独裁政治は恐怖政治となりやすい。

とはよく聞かれる意見でしょう。

 

 イメージとな異なり、民主政治は手放しで称揚されるほど優れた政体ではありません。為政者が有能で徳性を備えているのであれば判断・実行のはやい独裁政治は民主政治に勝ります。

 

 (疑似的なものはあるかもしれませんが、表立っては)これから日本が独裁政治へと移行するとは考えづらいものです。

 その日本でとられている議会制度は二院制。

 国民の声、少数派の意見を議会の俎上に載せ議論することは大切なことではありますが、衆議院の優越で結局は棄却されるだけでただの時間稼ぎか浪費にしかなっていないのではないかと思われる参議院の声や存在意義。

 

議会制度のパフォーマンス

 現代日本において参議院は必要であるだろうか?

 

 この問いに対して心情や感覚、感情、それこそイメージで答えては客観性を欠いた感情論にしかならないでしょう。

 

 というようなことをおもい、議会制度について考察されたものをちょっと探してみましたら『二院制度が民主主義の質と経済的パフォーマンスに与える効果に関する研究』(あるいはこの論説から『Adrian Vatter:Lijphart Expanded Three Dimensions of Democracy in Advanced OECD Countries.pdf』)というものにあいました。

 

 ここには

  • 1945年以降、OECD諸国中、二院制から一院制へと変更した国が5ヵ国あり、反対の一院制から二院制へと変更した国はないということ
  • 二院制か一院制か、大統領制か議院内閣制かなどの議会構造と、いわゆる民主主義の質、パフォーマンスとの間には有意な差がないこと
  • 一方で議会構造と経済的パフォーマンスとの間には有意な差がある可能性があるようだ(可能性の示唆に留めているのは仮説であり、経済的パフォーマンスは議会構造より政府と中央銀行との関係に依存するようだからです)
  • 議会構造と経済的パフォーマンスとの間の失業率のデータについては有意水準が低く帰無仮説は棄却(=対立仮設が採択)されますが、経済成長率やインフレ率は一院制の方が二院制よりも高いという有意な判断がされる(帰無仮説と有意水準

といった検証結果をあげた上で、「熟慮の第二院」「良識の府」という二院制構造に期待された効果を実証分析結果からは確認することができないばかりか、国家規模が大きい二院制ほど一人当たりGDP成長率が低いなど、むしろ経済的パフォーマンスに負の影響を与えている可能性が高いようだとの結論を示しています。

 

議場パフォーマー:GI‐I‐N

 この結論をうけて…

 形骸化した二院制では経済的パフォーマンスが悪いことは検証するまでもなく明らかなことで、そのような二院制は性能や能力という意味ではなく「わたしたちはちゃんと仕事をしていますよー」とアピールし耳目を集める演技という意味においての「パフォーマンスの府」と成り下がっているような第二院であるのなら、そんな第二院はなくともよい、いや、むしろない方がよい。

 現代日本の参議院がそうだとは言いませんが、そうではないとも言い切れない切なさよ…。

ということを改めて確認することができました。

 

的見解

 そんなとき、目にしたのが『AIに聞いてみた どうすんのよ!?ニッポン』

 

 番組タイトルに「AIに聞いてみた」とありますが、正確にはそれはAIではなく「ビッグデータ解析(による相関分析)に聞いてみた」というところなのでしょうけれど、それはそれとしてと…(なにしろゴロが悪いし長いからねぇ)

相関関係と因果関係 - Wikipedia

 

 それがAIであるにしろビッグデータ解析であるにしろ、いずれにしろ番組をみていて驚いたのは、多数の項目・データの(因果関係ではなく)相関関係が紐づけされてこうも目にも鮮やかに現在すでにもう表現できてしまうこと。

 相関関係ですからまったく関係なさそうな紐や単なる偶然による紐もあるのでしょうけれども、なんな風に視覚的に提示されてしまうと弱い根拠しかなくとも強い説得力をもって訴えかけてきます。

 

 俯瞰的で視覚的なこのデータ解析の結果をながめていますと、これまで気づけなかった関係や問題点、またその解決・解消策を考える契機となる一方で、その紐・関係に誤った意味づけをした上で、さらにそれを信じ込んでしまうこともあるのだろうなぁと、その有用さと危うさについておもうのでした。

 

人格不在のアイーン党

 現代のAIの日常生活への浸潤進捗具合や番組全体を通して見てみておもったのは、AI党の導入などから、AIのデータ解析やAIの"意見・判断"に(も)頼る議会制度が一般的、「ふつう」となる日もそう遠くはないでしょうということ。

 

 最終的にAIが主導するようになっているのかもしれませんが、その過渡期というのか、これからそのバリエーションとして第二院とAIによる議院(AI院←読むと「アイーン」になってシリアスさが損なわれてふざけているみたい…)とが入れ替えられた二院制、またはAI院を加えた三院制(はじめ参考程度に試験的にAIを政治に取り入れようと議院ではなく政党レベルで利用され、その後いよいよ有用であると明らかになっても「慎重な審議」などを強烈に主張して、その実、既得権を死守しようとの思惑から第二院存続路線から三院制となる国もでてくるかもね)なんてのも(ほんの一時)誕生するかもしれませんね。

 

何院制?

 参院選は必要か?

 最適な議会制度は?

 何院制がいいのか?

 

 結局のところ今はまだわかりませんが、思うに…

 文化・文明や技術の発達具合、または人口規模や経済規模といった規模によって最適な仕組みは異なるのではないかと思うのです。

 ただし、AI・機械技術が大いに進展した暁には、唯一それは発達や規模に左右されない最適解「である」のではなく「になる」のだとも思うところです。

(「である」と判断するところは人間の側にある恣意的なものですからね。)

 

 アナタはドのヨウにおモイマスカ?