わさびのはなし
わさび3本にじゃがいも玉ねぎなど、ダンボールいっぱいにお野菜をいただきました。
日本の物流はおそろしいもので「送ったよー」と電話をいただいたかとおもったらもう「お届け物でーす」。はやっ!
じゃがいもや玉ねぎはそこそこ日持ちするのでいいとして、問題はわさび。1本消費するのもなかなかたいへん。
天ぷらのタネの中でもわさびの葉の天ぷらが好きなものですから、「それなら根もいけるのではないか?」と以前、薄切りにしたりささがきにしてかき揚げにしてみました。そうしましたら辛味とともに味までとんでしまってひじょうに味気ない。
まずいというほどではないですけれども、ただただ味がない。葉の天ぷらはいい感じなのに…油の温度と熱を入れる時間の差かな?
そうしていつもすったものをふんだんかつ贅沢にサラダやお肉など、1食で1本使い切ってしまう勢いで、さまざまなものにのせて食べています。
本わさびは西洋わさびより辛さがさわやかでヒキとキレがよく上品です。すこしづつならぜんぜん辛くない。ちびちびとでも、一度に1本分食べるということはないとおもいますのでわからないとはおもいますが、一度に半分ほども食べますと、それまでまったく辛くなかったのに、まるでアレルギーの発症のように、ある日前触れもなく許容量を迎えてしまったかのように、急に辛さがやってきます。
ここを越えると、これ以上はどんなにすこしづつ口にしたとしても辛いのなんの。それに口の中がざらざらでもひりひりでもジャリジャリでもゴワゴワでもなく、ちょうどそのあいだのような、なにかそんなような口になって違和感ありありになります。
罰ゲームとしてのわさびの力の効果的な発揮の仕方
大量のわさびを口に含みますとえらいことになりますが、その威力を簡単により高める方法がございます。チューブのわさびでは威力が落ちますが、すりたてですとその威力たるやあなた、そうとうなもの。
その方法とは…まずはあたたかいご飯をご用意ください。そのうえにすりたてのわさびをのせてください。そうしましたら混ぜていただいてもそのままでもかまいませんが、少々お待ちください。お待ちいただく時間は30秒ほどでけっこうでございます。いいですか?それではそのわさびご飯に顔を近づけまして、わさびの風味をご堪能ください。
どうですか?できましたか?
おそらくできないとおもい。というのも、わさびの辛味成分が蒸気とともに立ち上り、催涙ガスのごとく目、鼻、のどを襲いますから。
蒸気がおさまり催涙ガスが落ち着きましたら一安心。今度はご賞味ください。
食べられるものならね。
油断しましたね?まだ目をやられるでしょ?
ちょっと冷めてきましたら今度こそ食べられますよ。
ではどうぞ召し上がれ。
はいっきましたね。「あ〜いける」とおもった瞬間、口内に蒸気がたまってまた目をやられて、先ほどよりものどやられたでしょう?
それに鼻から延髄にかけて辛味がほとばしったことでしょう?
どう?この威力?
わさびのチカラ
辛いものといえば唐辛子やカラシ、玉ねぎや生姜などさまざまありますが、わさびほど辛みが蒸気にのっかる辛さってないんじゃないかしら?それでいてあとをひかずスッ、とひいてくれて、なおかつ美容にも記憶力にも効果がある、こんないけずな辛みってないんじゃない?
抗酸化力で有名なのは赤ワインですが、フランス政府が常飲を控えるように勧告しております。そこでわさびはいかがでしょう?わさびも食べすぎはよろしくないですが、赤ワインよりも高い抗酸化力(摂取量なのかなんなのか、なにを基準にしているのか存じ上げませんが…)をもつそうですよ。
本わさびの栽培には清流が欠かせず(辛み成分に一種の毒が含まれており、外敵を寄せ付けないかわりにみずからも傷つけてしまうから)単価が高くなってしまうので、実現はむずかしいとはおもいますが、わさびによる催涙スプレー、催涙ガスというものがあれば、強力でいて後をひかないクリーンな護身・鎮圧道具となるのではないでしょうか。
わさびの産地と言えば…
わさびの産地といえば伊豆。でも伊豆のわさびは自生していた山葵を栽培し、山葵発祥の地、同じ静岡県の有東木から内々に持ち込まれました。
「内々に」というのは、当時(江戸時代)わさびは将軍家に納められるもので、他の地に持ち出すことをまかりならぬ御禁制品。
ある日そこへ椎茸栽培指導でやってきた者があり、彼は帰ってわさび栽培をはじめたいと懇願したのだそうですが、それがもし見つかれば死罪、かの地の栽培者は首をたてにふることができず追い返しました。
そうして追い返した直後、思い直してかの地のワサビ栽培者は彼を追いかけ、こっそり苗を持たせましたとさ。
その苗が無事に伊豆に持ち帰られ、こうして伊豆でわさび栽培がはじまりました。(という話をわさびについて調べ、会報誌かなにかに寄稿された方から聞いたのですが、正確には覚えておりませんで、もしこの話が盛られているものになってしまっていたらすみません。)ワサビ - Wikipedia
安易には言えません
今では「わさび=伊豆」とおもわれるでしょう。作付面積が有東木よりも広く生産量が多いですからね。でもときどきは有東木をかえりみて、かの地を訪ねてみてね!
とは申しません。
小さな集落があり道路もコンクリートで舗装もされましたけれど、はじめていかれる方では不安になるほどの急斜面があったり、がけ崩れ起こしたりするような、携帯電話の電波もとぎれとぎれの田舎で、サルやシカならまだしも、運が悪いとイノシシ、さらに運が悪いとクマさんに出会ってしまうようなところですから。昔うちのおばあさんがクマさんと目があってしまったということがありましたし。
有東木へとご案内いたします。
まっすぐ行けば静岡の中心地から1時間半ほどの距離です。
狭い道の両側に家々が1列に並ぶ道があるのですが、ここで不思議におもうことがあるのです。それはわずか100mほどのあいだに理髪店が3店ほどあること。それほどひと住んでないけど需要ある?と。
そんなことはいいとして、先へいきましょうね。
マニアおすすめの吊り橋「相渕橋」
中心街からすすみまして、あたりにだいぶ山が迫ってきたなぁ〜とおもったころ、そこそこながい真っ直ぐな道があります。
その道が曲がり出す手前、とってもわかりづらいですが、左手に今ではあまり見かけなくなった吊り橋があります。
いつだったか「吊り橋マニア」の方が「静岡県の安倍川沿いは全国でもめずらしく、吊り橋の多いところ」だというようなことをおっしゃっていて、そのなかで紹介されていた吊り橋がこちらの「相渕橋」。
検証!吊り橋効果
とは申しましてもなにもないですよ。吊り橋効果を検証したいとお思いの方はお試しになられてはいかがでしょうか?あっ!お相手をお忘れなく。おひとりでいってもそうそう吊り橋上ですれ違うことなんてありませんから、待ちぼうけくいますよ。来たっ!とおもってもストライクゾーンはずれた年齢だとおもいますから。
山から山へ
いつだったか、けぶる山を見て「こんなの見たことな~い」と感激されている声が聞こえましたが、あんなしょっちゅうみられるものが珍しいなんて、聞いてみないとわからないものね。
山に住んでいると移動が大変。今もいらっしゃるとはおもいますが、モノラックというモノレールに乗っての移動。おなじひとつの山での移動ならこれでいいですけれども山から山、あるいは平地から山への移動となるとモノラックでは役不足。
そこで、これは今ではもう見られないのかもしれませんが、半畳ほどの板を張った荷物を運ぶためのケーブルのやつ。なんていったっけ?あれに乗っての移動。
細くやや錆びたケーブルを頼りに定員3・4人で空中遊泳したものでした。渓流の上を渡ったりして、今思えばなかなかなことをしていたものね。
小休止どころ「真富士の里」
有東木への道へと戻りまして、さらに先へと進んでいきますと、ちょうど急カーブの頂点のところ右手側に温泉があり、そこも通過して進みます。
そろそろお手洗いが気になってきた頃、左手側に休憩できるような施設「真富士の里」がございますので、そちらへどうぞ。まわりにはとくになにもございませんから見所はありません。
めずらしいかな?とおもわれるのは、わさびのソフトクリームがあることぐらいでしょうか。
あっ!そうそう。つくる人によって出来がすこし違ってしまうことがありますが、スイートポテトやきんつばが絶品な日があります。よろしければ数回ご賞味ください。1度だけでは判断されませぬよう。
ここまででだいたい40分ほど。中間地点かな?
焼き魚は頭の骨まで食べますか?「見月茶屋」
道の途中、左手側に山女魚を提供しているお店があります。尾頭付きで串刺しの山女魚の塩焼きは骨まで食べられますので「魚って、骨をとるのがめんどうだからイヤっ」と、ふだんお魚をあまり食べないという方にはとくにおすすめ。もちろんさかなクンのようにふだんから鯛であってもなんであろうと、骨まですべて食べてしまうという方にもおすすめですよ。
二階の座敷につづく階段がちょっと急ですのでご注意ください。足腰だいぶ弱っている方は、ほんの数人でしたら下でも食べられないことはないとおもいますので、カネちゃんに聞いてみてください。
やっと彼の地へ「うつろぎ」
いよいよ「わさび栽培発祥の地」の石碑がおかれたところへと行きたいところですが、最後の最後にこの旅程の最難関。急な上り坂。はじめての方はもしかしたら「これ舗装されてはいるけれど、ほんとうに道?」とおもわれるかもしれません。失敬な。ちゃんとしたキレイな道です。
これができたら自慢できる
いらっしゃらないとはおもいますが、車高の低いお車では行かれませんように。まちがいなく確実にバンパーもげます。仮に行きは突破できても、きっと帰りにはバンパーもってかれます。
また、山道に不慣れな方は、できましたらお車で行かれるのはおやめください。じゃまです。危険です。とはいっても、他にアクセス方法ないんですけれどもね。
ここまでの道すがら、最近ではとくに休日ともなるとサイクリングを楽しまれている方を多く目にするようになったそうです。なにもないところなのに彼ら・彼女らはどこを目指しているのかは知りませんし、ここまでこられているのかも知りませんが、この坂道を自転車で登り切れるひとが果たしておられるのかどうか、というほどの斜面。
ここを通学路にしている若い男子学生のなかには、ふつうの自転車で(さすがに立ちこぎして)それができる子がいるよう?いたよう?ですけれども、いい自転車に乗っているあなたに果たしてこれができますかな?
もし達成できましたら自慢してもしたりないほどの健脚の持ち主だとおもいますよ。
お試しになられる際は決して無理をなさらないように。できなくても恥じることはありません。できるひとが異常なのです。
雨の日や雨後の道が濡れているときはおやめください。ほぼスベりますし、コケた日には止まれませんし、まわりに誰もいませんし、ケガをしても病院までの道のりは長いですから。
困難を突破してやっと到着。といってもなにもありませんよ。なにもないですけれどもこちらの「うつろぎ」でわさびの葉の天ぷらのついたおそばが食べられますので、よろしければどうぞ。
ご確認下さい
来た道が長く険しいということは、帰り道も長く険しいものだということですから、おきをつけくださいね。
静岡は東西南北にながくのびているため県民性は一括りにはできないそうです。静岡のなかでもそのまんなかあたり、静岡市周辺に住むひとにいわせると、西は遠州、東は清水、ここはもう性格がかなり違うのだそうです。
風が強く海が近いためか山の民からすると強い存在。「おっとり」しているのは中部の特徴のようです。静岡出身の芸能人といっても「どうせまた東か西でしょ」という、弱く目立たないのも中部の特徴みたいですよ。
King of 平均。THE平均は静岡のなかでも存在感のうすい中部だとのことです。
わさびのはなしからなんの話になってしまったのかわかりませんが、いじょうで~す。
※今回のお話はフィクションではありません。と、おもいます。おもうというのは、もしかしたら今はもうない施設があるかもしれませんから。もし行かれるようでしたら事前にお調べになってからお出かけになられた方がよいかと存じます。