よっ!まってましたっ!
刑事コロンボは2時間ものですがその長さを感じさせず(いろいろ試みておられることは見て取れますが、新シリーズはその限りではありませんけれどもね)、名探偵ポワロ(の短編)は1時間ものですがその短さを感じさせません(よく1時間でおさめられると感心します)。
はじめの疑い
昔の映画やテレビドラマは総じて紗をかけた映像が多いですが、名探偵ポワロのオープニングはとくに強め。
あのれいの妖しい雰囲気を醸し出すアルトサックスの音色の中、のっけから強く紗をかけたハゲたちょびひげのおっさんの広角の上がった微笑み。
これは「ポワロ」を語った元ジゴロのいかがわしい回想録なのではないかと初見では疑ったものです。
時を経て…
今ではそんなことはありませんし、特に「名探偵ポワロ」を見るときはテレビがだいぶ高い位置にありますので寝姿勢でみるのですが、そのときはポワロさんのように姿勢正しく手を組んで、居住まいではなく寝住まいを正してっ、と、靴のかわりに筆記用具なんかを整えたりしちゃって、あのれいの曲が流れてくると「待ってましたっ!」(といっても自分でかけているのですが)とばかりに手を叩きたくなる心持ちがします。
あの曲はスキップしません。
日常「ボンッ」とか「モナミ」とか言いたくなりますが通じないでしょうし、説明したところでひかれるでしょうから言いませんけれどもね。
ミス・レモンが事件ファイルをカテゴリー分けしているシーンをみて、わたしは到底ポワロさんにはなれませんが、レモンさんにはなれるかもしれない。
というよりポワロさんとレモンさんの関係がいいっ!とおもいました。
(分類つながりで、スーリオさんや青山昌文さんの芸術分類がおもしろいなぁとおもいました。芸術の体系的分類)
好きな順にポワロ → マープル → フォイル → コロンボ → トミタペといった感じです。トミタペはいいとして、フォイルがここまでのびるとは予想外で喜ばしいかぎりです。
印象的なセリフ
名探偵ポワロ「なぞの盗難事件」より
トミー・メイフィールド「どうして政治家は他の人間を馬鹿者扱いにするんですかぁ?」
サー・ジョージ・キャリントン「我々に投票したことが第一の理由だな」
ごもっともです。マスコミと政治家によるこんな掛け合いをみてみたいです。
一部の有権者がギャーギャー騒ぐでしょうけれど、スパイスが効いてていいじゃない?すこしかろみがほしいのです。
刑事コロンボより
「死者のメッセージ」
「もしあなたが姪の事故の捜査をしてくださっていたらこんなことをせずにすんだでしょう」アビゲイル・ミッチェルさん
担当者によって結果が左右されてしまうことに仕方のないところもありますが、不運・不幸なことですね。
「策謀の結末」
犯人はアイルランド出身の詩人、ジョー・デブリンさん(役名)。
この回ではいくつかの詩が読まれます。
・ルイス・キャロルさん
「殺人の罪に問われることもありうるだろう 人間はすべて弱いものだ だが私の犯した罪の中には 偽りだけはなかったのだ」
・ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲル(Georg Wilhelm Friedrich Hegel)さん
「悲劇の本質は善と悪の衝突ではなく善と善の衝突にある」
(作中日本語吹き替えではアイルランドの哲学者ジョージ・ウィルヘルム・フレデリック・ヘーゲル(英語読み)と紹介されていたと思います)
・アイルランドの絞首刑となったテロリスト、マイクル・ドーラン(この方が実在した人物なのかどうかわかりません)さん
【監房の壁に刻まれた『正義の詩』】
「すべてに正義を 自由に正義を 人にはふさわしき贈り物を 我が望みはただそれのみ」
「われわれは血に汚されぬ平和を求めることを知った」
「天使の慌ただしい羽ばたき」
「血に汚される平和の牧場」
日常のミステリー
通貨発行権のことが記載されていなかったり、反対に納税の義務が記載されていたり、法の下の平等がequal before the lawではなくequal under the lawなのか、政教分立ではなく政教分離と言うのか…いつどこでだれが手をいれたのか?反対に手をいれなかったのか?そんなことを探ってみると一見おもしろみのなさそうな憲法も、極上のミステリーのようにたのしめます。
こちらもいかが?