あめみか

「雨はいつもわたしのみかた。」 … 思想・哲学・世迷言からイラストまで、多岐にわたってたいへんくつに綴っています。

「責任」という言葉をめぐって

 歴代総理のなかで「任命責任」を認めた件数は最多なのではないだろうか?

 そしてまた、それでもなお続投する総理はこの先あらわれることはないのではなかろうか。

 

 まあそんなことはよいとして…

 

結果責任と経過責任

 任命責任を認めはしたがさりとて別段なにかアクションをおこすということはない。

 「なにかアクション」というのは例えば責任を取って辞任するといったこと。

 

 上の文で「責任」という言葉が二度でてきますが、その意味するところは別のもの。同音異義語どころか同言異義語。

 

 この場合の「任命責任を認める」というのは謂わば「任命した非を認める」ということ。

 ということはこの「責任」という言葉は「過ち」や「過失」、「失策」「失態」といったこと。

 

 また、この場合の「責任を取る」というのは謂わば「その立場・社会から退場する」であったり「懲罰を受ける」「賠償する」「ある人や組織の身元・地位を保障する」ということ。

 ということはこの「責任」という言葉は「贖う」や「補償」といったこと。

 

 同じ「責任」という言葉でもその意味するところはまったくとまでは言えないまでも少々、異なっていることがある。

 

 そんなことは辞書でもなんでもちょっと調べてみればすぐわかること。「責任」という言葉にはいくつかの意味があるということは。

 

2つで1つな2つの責任

 そこで、「責任」という言葉について調べてみますと「保護者・引率者としての責任」や「事故の責任」「責任の所在」といった例文が見受けられます。

 

 すると複数の意味をもつ「責任」は大別すると2つに分けられるのではないかと私にはおもわれるのです。

 

 つまり、結果に対する責任と(ある結果を招かないように善処する、大事に至らないように注意する)経過・過程に対する責任とに分けられるのではないかと。

 

 result responsibilityとprogress/process responsibilityという言葉が英語にあるのかどうかはわかりませんが、これをR-resとP-resとか略して呼称したらそれっぽく聞こえるかな?

 

 英語で責任はresponsibility。responseは反応や応答ということ。

 結果にせよ過程にせよある出来事に対して応答することが責任であって、責任の放棄とはノンリアクション、ネグレクト、無視、放置、放任することでしょう。

 その意味では非を認めるというだけでも責任を取ったこととなるのかもしれません。

 さりとて2つ目の責任(結果責任)については無視したこととなるのでこちらの責任は果たしていないという状況は変わらないわけです。

 

「責任」に注意を払う必要

 「責任」に限らず複数の意味をもつ言葉は数多あります。だからこそというべきか、重大な問題・事案がもちあがったときには、その言葉の発信者も受信者もより慎重に言葉に対する必要があるのではないかとおもう。

 

 たとえば、任命責任を認めつつも引責辞任はしないといった場合、そういった発言の発信者は受信者に対して自身の非を認めるという(実質、有名無実な)責任は取ってもさりとてそのために自身を罰したり不利益となるような責任は取らないけれどもこれで責任を取ったものと納得させなければなりません。

 つまり、2つの異なる意味をもつ「責任」をあたかも1つのものと意図的に混同し、相手を困惑させてあたかもすでに2つ目の("実質的な")「責任」をも果たしたかのように謀る必要があります。

 

 反対に、そういった発言の受信者は発信者に対して時に「自身の非を認めただけで責任を取った気になるんじゃない!」と、意図的に1つに混同された「責任」という言葉を冷静に分析し、ふたたび2つのそれぞれ異なる「責任」へと還元して追及・叱責する必要があります。

 

 

 任命責任ということで言えば、任命者には任命した者がなにか事件・事故をおこすという結果に至るまで、つまりその経過段階において任命した者を管理・監視し事が起きないよう注意・配慮するという建前でその実なにもしなくてもよいという実質なんの責めも責任も負わない平穏無事な立場に置かれますが、ひとたび事が起これば、つまり結果が出てしまっては、その不始末の責任を、任命したそのときの判断力(およびその判断を行使し続けてきた過去)をも遡って含められ、それまではなんの効力も持たなかったはずの経過責任をも振り返って、時間を遡って現在の結果責任に繰り込まれて合わせて責任および責めを負うこととなります。

 

 こうなると結果責任を取らないということは、振り返って・併せて経過責任をも取っていないということとなり、総じてなんの責任も取っていないということとなります。

 するとこの場合「任命責任(経過責任)を認めた」といってもなにも認めたことにはなっていないし、なにもしていないし、なんの責任も取っていない、non-responseなので無責任(←「責任が無い」ということではなく「責任感が無い」という方の意味ですよ)ということになります。

 

…なりますか?なりませんか?どうですか?そうですか。……