孤独な調停者
男の子同士の喧嘩は止めない。
女の子同士の喧嘩は止める。
止めたり止めなかったり
普段言えないことをぶつけあったり殴り合ったりして不器用にしか表現できない男の子が多いから。
言い過ぎてつい軽やかに一線飛び越え派閥を形成して引くに引けなくなっている女の子が多いから。
だから…
男の子の喧嘩を仲裁すると不完全燃焼に終わってわだかまりが残っちゃう。人と場合によっては仲裁者に対してなにか恨みにも似た感情を抱かれるよ。
女の子の喧嘩は妥協点を提示して仲をとりもって仲裁しないとわだかまりが残っちゃう。人と場合によってはどっちに転んでも喧嘩してた者同士でグループ形成して仲裁者が排斥されることがあるよ。
だから女の子の方が圧倒的にめんどう。
日頃の調停
でも普段の対応はどちらかというと逆のような感じ。
つまり…
男の子同士の場合は、相手がああ言っていたよ、こう思っているそうよ、と人づてに仲介して伝えてあげる。
女の子同士の場合は、相手がどう言っていたよ、こう思っているそうよ、なんてこと、たとえそれがよいことだったとしても口にしない。伝えない。
だからできるだけ聞かないように、知らないように距離感気をつける。
三猿のように「見ざる聞かざる言わざる」がちょうどいい。
つまり良いことだろうとなんだろうと話題にのぼるだけでも、名前を口にされるということでさえ嫌悪する子がいて、なおかつその地雷どこに埋まっているのか狡猾に隠されているから危険。
見て聞かぬふり
男女の喧嘩は三十六計放置に限る。
巻き込まれると仲直りするにしても喧嘩別れするにしても、たいていひとり仲介者が割を食うだけだから。
反対すれば反発して燃え上がる。
賛成すればなにかしら利用されて共犯にされる。
「一緒にいることにして」「そこ貸して?」「来てくれる?」「どうしたらいい?(←どうもこうもすでに計画立てて後は役者を募っているだけなのにねぇ)」
かといって無視するわけにもいかないから話は聞く。でも聞くだけ。答えは言わない。
答えは問題抱えてる出題者に言わせて言語化させて自分で自分を納得させてあげる。覚悟を決めさせてあげる。
覚悟の一手は諦めの関与
厄介なことに怒り出すほど執拗に模範解答の例示や列挙を求めてくるひとがいるけれど、これはもう仕方ないからこちらが覚悟を決める。
うまくいけば依存されて次の難題が待っていること(順調な間は蚊帳の外、困ったときは向こうからお構いなしにコンタクトとってくるから)。
うまくいかなければただの八つ当たりでこちらが謝ることなんて一つもないのだけれど、謝って主導権明け渡して関係回復するか、毅然と応じることで逆恨みされて周囲にあることないこと吹聴されながら決裂するだろうことを。
仲裁・仲介者の憂鬱
同業者の説得は難しい。
だからわたしにはわたしは現れない。
ひともわたしにはなれないし、わたしもわたしに似たひとの力にはなれない。
順調なときは必要なく、過渡期には頼られ、問題が解決すればまたさようなら。
困ったときにだけ必要とされるお守りのようなもの。
こうしてひとりだれもいない。
人を羨ましく思うのは楽天的なところ。
それに…ひとには、あなたにはわたしがいること。
わたしにはわたしがいなかった。
私には私が欠けているの。
わたしにはわたしがいないのにわたしからのがれられないやなくさり。