緊張・緩和・笑い
古今東西「笑い」についてあれこれ考えて分類された先哲のお歴々がおられまして、ひとによっては2つ、ひとによっては4つ、または13パターンやら20項目など、それぞれに説得力のあるさまざまな分類法・カテゴリーが居並び、しかして笑いの統一理論はいまだ「コインよりもっとちっさいのんわぁ~…」というぐあいでございまして、つまりは「ないんやで~」なのでございます。
笑いの20種類
このなかでもっとも歴史の浅いものは「出・隠・逆・似・素・下・時、切・遠・量・心・物・止・触・獣・地・役・迷・名・感」の20項目に分けたものでしょう。
2012年にネット上に提示されたもののようでして、わたしはこのほどはじめてお目にかかりました。
賛否両論「こじつけだぁ」「意味がわからな~い」などの、やや否よりの意見がおおいように見受けられました。
20分類については↓コチラをどうぞ。
枝雀さんの13
3年も前のことで旬がすぎていまさら感はぬぐえませんが、わたしの感想を述べさせていただきますと…
枝雀さんは笑いのパターンを「合わせ・繰返し・逆さま・誇張・スライド・立スライド・エスカレーション・両義・ドンデン・ナゾトキ・知らず困り・衝突困り・こわがりいやがり困り」の13に分類しています。
また、旧来の伝統的な古典落語の「にわか落ち・考え落ち・しぐさ落ち・とんとん落ち」のような4つの分類の仕方は、視点が噺家にあるのか登場人物にあるのかお客さんにあるのかが曖昧であるということを喝破し、新たな学術的な分類として「ドンデン・謎解き・へん・合わせ」の4つの分類を提出しました。
枝雀さんの13パターンについては↓コチラをどうぞ。
枝雀さんのサゲの4分類などについては↓コチラをどうぞ。
桂枝雀『緊張の緩和』論ノォト - 『digital ひえたろう』
20の問題
ふりかえって20分類においては、「20分類」が「笑い」なのか「状況・シチュエーション」なのか「ギャグ(の型)」なのか「サゲ」なのか…いずれの語・定義を冠しているのかがわかりません。
また、枝雀さんが射竦めた視点について考慮されていないために篩の目が粗く洗練されておらずこじつけとみなされてしまうのではないかとおもいます。
「20種類の笑い」「叫ぶ場所が20にわかれて」「20個に分かれてる」「20個のコント(設定)」「20個の笑い」「20項目」といったぐあいに、なんの20なのか…
ですから、もう一歩踏み込まれると枝雀さんや古佐田さんや上岡さんや紳助さんや、それこそ松本さんがみている……(の?)かもしれない視点を得られたのではないかとおもいます。
落ち下げるまでの長さ
わたしの感想も否によっているとおもわれるかもしれませんが、さにあらず、新奇で貴重なたいへんな労作と賛よりの意見でございます。
枝雀さんは落語のサゲを4つに分類したわけですが、落語は話(噺・咄)ですので長さがあります。
対して一般的なギャグには話がなくて短いわけですけれども、話をギュッとつづめたもの、濃縮したもの、(個々の)お客さんの状況や物語の延長にポンッと据えたものと考えると、落語のサゲと限定せずとも笑いのオチ全域を包容するのではないかとおもいます。
そんなことはもうすでに説かれて久しいことなのかもしれませんが…なにぶん笑いの素人(かといって玄人なものはなにもありませんが…)なものですからお許しください。
笑いの理論の集大成
笑いの哲学の系譜は「緊張の緩和」のカントさんから発し、(ベルクソンさんあたりを寄り道して)枝雀さんの「サゲの4分類」「緊張と緩和」で大成されているとわたしにはかんじられます。
カントさんは笑いの発生「緊張の緩和」を分析して、枝雀さんは笑いまでの過程も射程に入れた「緊張と緩和」を分析したのではないでしょうか?
笑いの大家といわれる方々こぞって「笑いの(統一)理論これにて決着!」と言い切って決定してしまって、ここに落ち付けてもいいのではないかとおもっております。