今週のお題「私のテーマソング」
梯子を架けなければのぼれない屋根裏にどうにか吊り上げて安置された。
祖母が亡くなって役目を終えた木製の機織り機。
覆いの布とほこりをかぶってねむっている。
昔ながらの祖父の家できく。
ツクツクボウシが退場したあと、夏の夕方前、ひぐらしの鳴き声。
カナカナカナカナカナカナカナ…。
ふいにラジオから流れる夏。
サザンのバラードの一撃。
思い出もなにもないのになぜか心臓をキューッとしめつける潮風。
ちょうど、秋口、いま時分。
床についてきこえてくる夜空の星々の擬音。
スズムシをはじめとして、ほかは名前も知らないさまざまな虫たちの混声合唱。
キラキラキラキラキラキラキラキラ…。
特別な想い入れがあるわけでもないのに…。
最初の一音で…。
いつともないいつかに引き戻す曲。
詩がなにを意味しているのか。
なにかを意味しているのか。
すでに意味を失っているのに…。
空間を湿った悲哀ではない憂愁のスパイスをおびたセピア色の渇いた黄昏にかえてしまう。
はじめの一音。
あらがえない感情を強要する印象的な音々。
さまざまあれど…。
わたしにはこのデモニッシュな曲。
Procol Harum(プロコル・ハルム)『A Whiter Shade of Pale(青い影)』。
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