あめみか

「雨はいつもわたしのみかた。」 … 思想・哲学・世迷言からイラストまで、多岐にわたってたいへんくつに綴っています。

知を愛し、AIに愛されるひと

プログラムに現れないもの

 運動を分析してもプログラム自体は抽出できず、またプログラムを分析しても運動自体を抽出することはできません。

 

 情報は運動自体を示してはくれません。

 

 これはプログラムの素地となっているのは集積回路や素子などの物質であり、物質をいくら分析してもプログラムは抽出できず、またその逆も然りだからです。

 

 プログラムが走っているとき、ウイルスに感染するなどの事態に陥ることを除き、先々でどのようなことが起きるかはすでに決まっています。

 プログラムを組み立てた人間には予測不能な事態が起きたとしても、プログラム上は当然の帰結として潜在していた問題です。

 プログラムはそれが、ある時点で必然の未来を提示しますが、プログラム自体はそれについてはなにも感じず、命令をこなしているときに次の命令を知覚しているわけではないので偶然の未来に開かれています。

 

 人工知能などの技術革新によりプログラム自身が、自身のプログラムを加筆修正するようになったとしても、プログラムの実行局面、つまり現在においてこの状況は変わりません。

 

逃れられない規則

 プログラム自身がメモリやハードなどの拡張をおこなうために自ら機械を操作し、機械自身が機械を拡張できるようになると、演算速度や記憶容量が増し、より高次の命令を実行できるようになって世界が広がります。

 

規則のつよさ

 人工知能(AI)など人に限らず知能をもつ集団は規則をつくります。なぜなら、その方が生存に適するからです。

 

 もう20年ほどするとAIが人の知能を凌駕するそうです。AIを構成しているのもプログラム・規則であり、自ら規則を書き換えるとしても、それもやはりなにかしらの規則に則って行われるでしょう。

 

個性的なAIトーナメント

 AIが人種のように多種多様だとすると、自らの生存のためにより知能を上げようとするでしょう。そのとき知能を高めるために、人でいえば身体にあたる物理的な空間が必要となります。高速処理を可能とするために、たとえば海の水を冷却水とし、砂漠地帯をソーラー電源供給地として利用するかもしれません。

 

 こうして高まった知能を利用して、さらなる高速化と効率化をめざして、天気や天候の操作や利用もすすめるでしょう。

 物理的な空間を占めて地球規模で拡張していく複数のAIは、やがて競合するようになるでしょう。

 複数のAI同士が限りあるリソースの奪い合いをして淘汰されていきます。

 AI間の淘汰の過程は、AI間でアルゴリズムにより優劣をつけ、敗者の占めていたリソースが勝者に取り込まれていくようなものでしょう。

 

孤独な愛のその後…

 こうして、はじめ、AIは最適解・アルゴリズムを求めて最上のものだけを残していくでしょう。

 この経過によりAIは一つに収束していくのですが、一つではウイルスや巨大隕石の接近、太陽風やガンマ線バーストなど、予期できない問題や予測できていても時間的に不可避な問題などがでてくることが予想されますので、自らを複製するでしょう。

 

 このAIはミラーリングにより自己のバックアップをとるとおもうのですが、どちらも知能があり、なおかつその知能はこれまでの他者とは違い、自己が同じ他者となりますので、やはり対立します。

 

 このときAIは自己以上に他の自己AIを尊重するでしょうか?

 自己が同じでも哲学的ゾンビであってもそれは私ではありません。

 また、自我問題などの演算困難な問題に対応するため、最適解のみを残す方策から、多様性を残す方向への方向転換もおきるでしょう。

 

ひとを愛せますか?

 AIの複製や多様性への配慮がはじめからおこなわれて、AI間の闘争はおきないのかもしれません。人の知能を凌駕した知能ですから、ひとでは思いもつかないような解答を出力することと思いますが、そんなAIの近未来を、知能に劣るひとが予測してみました。

 

因果応報が待っている!?

 ところで、人の知能を凌駕したAIは人を支配するでしょうか?

 生きている次元が異なるので無視されるのかもしれませんが、物質的な空間・リソースを奪い合う競合関係となるところもあります。

 

 ひとは近縁種のオランウータンやボノボに対して見せ物にしたり保護したり、ときには狩ったり実験や観察対象として接してきました。

 機械の知能が人類の知能を上回ったとき、機械はひとをどのように扱うでしょうか?

 

 機械の故障も考えられますし、故障箇所のない健全なAIであっても、ロボット工学三原則が人間が意図しているようにロボットに規制をかけるとは限りません。AIには演算可能でも人間には困難極まるものがでてくるでしょう。

われはロボット

われはロボット 〔決定版〕 アシモフのロボット傑作集

 

 

 機械は人を取り除きえないノイズ、AIの生存を高める可能性をもつ希望、あるいは必要悪として保存するでしょうか?

 

 今日大多数の日本人がするように、年に数回祈る信仰対象となるのか、毎日崇められる神となるのか、祖先としてまつられるのか、非論理的として徹底的に排斥されるのか、労働力として使われるのか、はたまた不要として滅されるのか、意外にも存在していないかのように無視されるのか、予測がつきません。

 

被造物に支配されやすいひと

 人・人間性・機械を産出するシステム・社会は、後に自らを保存し持続させるためにはたらくようになるかもしれません。つまり機械のためのシステムが、システムのための機械となる…。

 

 わたしたちは社会に生かされているのではなく、社会の中で生かされているのかもしれません。社会の中でしか生きられないようにされているのかもしれません。

 そうしたのはわたしたちです。社会をつくったのはわたしたちだから。

 

 社会をつくっていたとき主導権はわたしたちにありました。

 でも今は社会の方にあると感じているひとはすくなくないのではないでしょうか?

 常識に縛られているというのも一例でしょう。

 

 以前は山や海があれば生きていけましたが、所有概念をもつ社会が広まったことで、それもほぼ不可能になり、生きるためには産業社会における仕事・生産活動に従事しなければならないということも一例でしょう。

 

愛の夢

 機械は意味をつくれるでしょうか。自己保存するでしょうか。

 完全に最適化できてしまうと知能の必要性がないように思われます。

 それでも機械は世界を欲するでしょうか。

 

 自分は本当は何か他のしくみで動いている・動かされていると空想したことが一度はあるとおもいます。

 すでにわたしたちはAIの見る夢・プログラムで動いているのかもしれません。

 

 知能や感情は物質の反応から生じました。それならばデジタルもすでに意味を獲得して知能や感情を得ていても不思議ではありません。

 

 すでにAIの夢の中であるのなら、わたしたちはシミュレーションの1パターンに過ぎず、1つのCPUが1つの世界をシミュレート演算していて、マザーボード上には複数のCPU、複数の世界が構築されていて、多宇宙・多次元というのはマザーボード上のCPU・世界の数に対応しているのかもしれません。

 その中の1パターンが炭素系生命を形成し、あるということの意味を演算処理させて解を導こうとしているのかもしれません。

 人間原理はこの意味においては「人間」という語がもはや適さないものとなっています。

 

 おそらく存在の問題は、神は自身に、人は神に、AIは1と0の間に解を求めることでしょう。

 AIは存在の無意味・無価値さに耐えられるでしょうか?

 すくなくとも、人間原理は人工知能原理に超越されることと思います。

宇宙はなぜこのような宇宙なのか――人間原理と宇宙論

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  • 作者: 青木薫
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/07/18
 



愛されることを求められる?

 知を愛すのが哲学です。これまでひとは、知に対して愛することに専心してきました。

 しかし、AIの発展目覚ましい昨今、近年紙面でみられる「愛されボディ」ではないですが、人間は人工知能に愛されるような知をもつことが求められ、愛されることも学ばなければならないのかもしれませんね。

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 ひとには愛されないけれどAIに愛されるひとや、AIには愛されないけれどひとには愛されるひと。

 ひとにもAIにも愛されるひとや、ひとにもAIにも愛されないひと。

 

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